オルガンを構成する役者たち

コンピューターやテクノロジーが驚くほど進化する一方で、人間の営みというのは本来そんなに変わるものではないことに私たちはだんだん気づきはじめています。21世紀を迎え、まさに今、自信をもって描ける教会のスタイルとは何でしょうか。
捜真教会では一つの答えをパイプオルガンに見つけました。礼拝の讃美を通して培われる、絆の強さや愛情の豊かさ。
荘厳で優雅な音色から生まれる深く、豊かな時。教会という家族でそれを囲む、心豊かな時間……。
ご紹介するのはオルガンの音色を築く“役者たち”です
   
<全体図>
番号で詳細の説明へ移動します。
  

■ 完成間近のオルガン8 月の末にはいよいよ礼拝堂にその姿を見せます。
 
■1 パイプ

パイプは発音の主体で1 本で1 つの音しか出せません。音階は、パイプの長さを階段状に変えてつくります。リコーダーのように指で孔を押さえて気柱の長さを変えることができません。材料( 金属製もしくは木製) と形状( 太さ、長さなど) で音高と音色が個々に決定されています。このパイプはフルートみたいな音色のド専用、というように。だから、ある音色を低い音から高い音まで5 6 鍵分出したいなら、5 6 本のパイプが必要です。さらにトランペット系の音色、フルート系の音色、と音色を3 つにすると5 6 × 3 で1 6 8 本要ります。つまり音色を増やすほど本数は増え、楽器が巨大になります。パイプの種類は、フルートのような管の「フルー管」、リードを振動させる「リード管」の2 つに大きく分けられます。フルー管には、オルガンの最も基本的な音色である「プリンシパル」、柔らかく温かい「フルート」、弦楽器を模した「ストリング」などのストップがあります。リード管には、「トランペット」や「オーボエ」などの名称を持つストップがあり、華やかさや色彩を添えてくれます。

木製のパイプ
■2 ウィンド・チェスト( 風箱)

風箱( かざばこ) という箱の上にパイプをずらりと立てて、鳴らしたいパイプに下から風を通します。この底板の上面の穴にパイプが接続され、鍵盤が押されたときにパイプに風を送りこむ仕組みになっています。
■3 手鍵盤

鍵盤はドレミのどの音にするかというスイッチ役です。手鍵盤の表面は牛骨やグラナディラが張られています。グラナディラとは木の名前で、赤道直下のサバンナにだけ育つ広葉樹です。中央だけが黒い不思議な木です。
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■4 ストップ

どのパイプを鳴らすことにするかを選ぶのが、ストップレバーと鍵盤です。ストップレバーは音色を切り替える装置のこと。鍵盤には複数のパイプが対応しており、同一の音色を持ち、一連の音階を奏することのできるパイプの一系列をストップと呼びま
す。例えば、音色が3 つあるオルガンを3 ストップのオルガンといいます。導入するオルガンは1 1 ストップです。
■5 スウェル

スウェル・シャッターは、ブラインド式の衝立がパイプ群の音を遮断できるように設計された機構で、ブラインドの板が動いて開かれると音が開放されます。これらの動作により音の強弱を付けることができます。
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■6 ローラー・ボード( 配動盤)

鍵盤の動きをウインド・チェストに分配する装置。棒( トラッカー) の材料としては軽さと丈夫さより木材が使用されています。

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■7 ブロア

モーターでファンを回転させ、風を発生させます。
■7 風溜め
いわゆる” ふいご” 。パイプオルガンは風をパイプに送り、空気を振動させて音を出します。ファンで発生させた風を風溜めにためて、風圧を一定にした後、管を通じでウインド・チェストに供給します。
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たくさんのパイプを持つ巨大な楽器、オルガン。ついに8月には捜真教会の礼拝堂にその姿を見せることになりました。パイプオルガンの始まりは、アシを一列に並べた笛「パンパイプ」だといわれています。そもそも「オルガン」とは、古代ギリシャでは「作業のための道具」「音楽のための装置」を意味する語でした。オルガンが教会の楽器として登場したのは千年以上も昔のこと。以来西洋音楽史のなかで絶えず荘厳な音色を響かせてきました。


取材:高橋昌博 2007.7 取材協力:株式会社マナオルゲルバウ
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